マウスピース矯正を始める際、親知らずを抜くべきかどうか迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「抜歯すると痛みや治療期間が長引きそう」「費用が増えるのではないか」と不安を感じ、できれば抜かずに矯正したいと考える方も多いでしょう。
結論、マウスピース矯正において治療の妨げにならない親知らずは、必ずしも抜く必要はありません。
この記事では、親知らずの抜歯が必要なケースと不要なケースの違い、抜歯によるメリット・デメリット、治療中の注意点を具体的に解説します。


マウスピース矯正で親知らずを抜くケースとは?

マウスピース矯正の前に親知らずを抜くケースは以下の3つです。
- 隣の歯並びを圧迫している
- 虫歯や歯周病になっている
- 歯を動かすスペースがない
それぞれ詳しく解説します。
隣の歯並びを圧迫している場合
親知らずが横向きや斜めに生えている場合、隣の歯を押して歯並びを乱す原因となります。
日本人は顎が小さく、特に下顎はスペースが狭いため、親知らずの圧迫によって歯ぐきの炎症や痛み、噛み合わせの不調を引き起こしがちです。
そのままの状態でマウスピース矯正を始めても、親知らずが隣の歯を押し続けているため歯が正しく動かず、矯正効果が出にくくなる可能性があります。
また、矯正で歯並びを整えても、親知らずの力が残っていれば歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きるリスクもあります。
虫歯や歯周病になっている場合
親知らずはブラッシングが行き届きにくい位置にあるため、汚れが溜まりやすく虫歯や歯周病のリスクが高い部位です。
もし親知らずが虫歯や歯周病になっている状態で放置すると、口腔内の健康を損なうだけでなく、マウスピース矯正の治療期間が長引く可能性が高まります。
これは、炎症や痛み、腫れなどのトラブルが起きやすくなり、矯正治療を一時中断して虫歯や歯周病の治療を優先しなければならない場合があるためです。
さらに、虫歯や歯周病は親知らずにとどまらず、隣接する健康な歯にも感染が広がる可能性があり、歯列全体や矯正の仕上がりに悪影響を及ぼしかねません。
そのため、すでに虫歯・歯周病がある親知らずや、リスクが高いと診断された場合には、矯正開始前に抜歯を勧められるケースが多くなります。
歯を動かすスペースがない場合
マウスピース矯正では、歯を段階的に動かして理想的な歯並びを目指す治療法ですが、そのためには一定のスペースが必要です。
親知らずが残っていると歯を並べる余裕が不足し、矯正計画に支障をきたすことがあります。
特に奥歯の位置に余裕がない場合、歯を後方に動かす「後方移動」が難しくなり、治療期間が延びたり、仕上がりに影響を及ぼしたりします。
実際に、あごのサイズが小さく歯が並びきらない症例では、矯正前に親知らずを抜くケースが少なくありません。
叢生(※)や出っ歯、受け口なども、スペース不足が原因で抜歯が必要になる代表的な例です。
※歯が重なってデコボコしている状態

マウスピース矯正で親知らずを抜く必要がないケース

マウスピース矯正を受ける際、歯並びや親知らずの位置、根っこの状態によっては、そのまま残すほうが適切な場合もあります。
レントゲンや口腔内検査などの診断や治療効果を踏まえて、将来のリスクを矯正歯科医に総合的に判断してもらいましょう。
ここでは、マウスピース矯正で親知らずを抜く必要がないケースについて2つご紹介します。
- 歯を並べるスペースが十分にある
- 親知らずの根っこがない
歯を並べるスペースが十分にある場合
親知らずが真っ直ぐに生えていて隣の歯に悪影響を及ぼしていない場合や、すきっ歯のようにもともと歯列に余裕がある場合は、親知らずを抜歯をせずに矯正を進められます。
親知らずの位置や向きについては、歯科医がレントゲンや口腔内の状態を確認した上で判断します。
問題がなければ抜歯をせず温存する方針がとられる場合もあります。
親知らずの根っこがない場合
親知らずの根っこが歯ぐきや骨にしっかりと固定されていない場合、周囲の歯への影響も少ないため、抜歯を回避できるケースがあります。
また、親知らずが歯ぐきの中に埋まっていて歯列や矯正計画に支障がないと判断され経過観察となる場合もあります。
ただし、矯正中や矯正後に根が成長し親知らずが動き出すと、隣の歯を押して歯並びに悪影響を与えてしまいます。
特に、横向きに埋まっている場合は治療の妨げや後戻りの原因となることがあるため、状況に応じて矯正前に抜歯を提案されます。

マウスピース矯正で親知らずを抜くメリット

マウスピース矯正で親知らずを抜くと、メンテナンスのしやすさ以外にもメリットが2つあります。
- 歯が綺麗に並びやすい
- 虫歯や歯周病になるリスクを減らせる
詳しくご紹介します。
歯が綺麗に並びやすい
親知らずの抜歯で歯列にゆとりが生まれ、マウスピース矯正をスムーズに進めやすくなります。
特にスペース不足で歯が重なり合っている場合は、親知らずを取り除くことで歯を動かす余地が広がり、全体のバランスを整えられます。
その結果、仕上がりが美しくなるだけでなく、噛み合わせの改善や後戻りのリスク軽減にもつながります。
また、歯が整っていると日常のブラッシングがしやすくなり、汚れが溜まりにくくなるといった衛生面のメリットもあります。
虫歯や歯周病になるリスクが減る
親知らずは口の奥にあるため歯ブラシが届きにくく、プラーク(歯垢)や歯石が蓄積しやすい環境になりがちです。
そのまま放置すると虫歯や歯周病が進行し、治療に時間や費用がかかるだけでなく、マウスピース矯正を一時中断しなければならないこともあります。
あらかじめ親知らずを抜歯しておけば、口腔内を清潔に保ちやすく虫歯や歯周病のリスクを抑えられます。

マウスピース矯正で親知らずを抜くデメリット

マウスピース矯正で親知らずを抜くデメリットは、治療期間が延びる可能性があるだけではありません。
ここでは、マウスピース矯正で親知らずを抜くデメリット2つをご紹介します。
- 抜歯した後に顎や頬が腫れる
- 顔に青あざができる場合がある
抜歯した後に顎や頬が腫れる
親知らずを抜歯した後に顎や頬が腫れるのは、炎症反応による一時的な症状であり、通常は2~3日目がピークで徐々に腫れが引いていきます。
特に下顎の親知らずを抜いた場合は、上顎に比べて腫れやすい傾向にあります。
また、親知らずが歯茎に埋まっていたり、歯根の形が複雑な親知らずは抜歯が難しく、術後の腫れや痛みが強く出ることがあります。
このような場合、抜歯前から周囲の歯茎に炎症を起こしていることも多く、抜歯によってその炎症が一時的に悪化してしまうのです。
一方で、親知らずが綺麗にまっすぐ生えている場合には、抜歯後の強い腫れや痛みは比較的少ないとされています。
通常、腫れは1週間ほどで落ち着きますが、それ以上続く場合は感染症の可能性があるため、早めに歯科医に相談しましょう。
腫れを抑えるには患部を短時間に分けて1時間に数回冷やすのが効果的です。長時間冷やしすぎると血流が悪くなり、かえって回復が遅れることもあります。
処方された痛み止めや抗生物質を正しく使い、安静に過ごすことも回復を早めるポイントです。
顔に青あざができる可能性がある
親知らずの抜歯後、顎のまわりに青あざのような皮下出血が現れることがあります。
これは、抜歯の際に血管が損傷、内出血が起こるためで、特に抜歯の難易度が高い場合や、顎の骨を削るような処置を伴うケースで起こりやすいとされています。
青あざは打撲と同様、時間の経過とともに色が変化しながら自然に薄れていくのが一般的です。
また、抜歯中に下顎の神経に近い位置を処置する場合、神経に触れてしまうことで一時的なしびれや感覚異常が出ることもあります。
マウスピース矯正において親知らずの抜歯が必要と判断された場合は、こうしたリスクについて事前に歯科医の説明を受け、納得した上で治療を進めることが大切です。

マウスピース矯正前に親知らずを抜く際の注意点

抜歯後は傷ついた歯茎に細菌が入りこまないようにするため、傷口を清潔に保つ必要があります。
ここでは、親知らずを抜く際の注意点を2つご紹介します。
- 麻酔が切れるまで食事は避ける
- 抜歯当日は激しい運動を避ける
麻酔が切れるまで食事は控える
親知らずの抜歯後は患部が敏感な状態になっているため、麻酔が完全に切れるまで食事は控えてください。
麻酔が効いている間は感覚が鈍っており、噛む力加減が分からなくなることで傷口を刺激したり、頬や舌を誤って噛んでしまったりするリスクがあります。
出血が増える恐れもあるため、麻酔がしっかり抜けるのを待ちましょう。一般的な局所麻酔(浸潤麻酔)は1~3時間で効果が薄れていきます。
しかし、親知らずが顎の骨に埋まっているような難易度の高いケースでは、より広範囲に作用する「伝達麻酔」が使われることがあります。
伝達麻酔は3~6時間ほど麻痺が続き、舌や頬、喉にまで影響が及ぶことがあるため、食事や飲み物による誤飲などの危険が高まります。
食事を再開する際は麻酔の効果が完全に切れていることを確認し、最初のひと口はゆっくりと噛んで飲み込む感覚を確かめましょう。
抜歯当日は激しい運動は控える
運動によって血流が促進されると、傷口からの出血が止まりにくくなったり、腫れや痛みが悪化する可能性があります。
特にマウスピース矯正の前段階で抜歯を行う場合は、術後の経過がその後の治療計画に影響することもあるため、抜歯当日の運動は避けましょう。
また、口の中は空気に触れにくく、外傷と比べて止血に時間がかかる部位です。
抜歯後に止血できたように見えても、実際には薄い血の膜で覆われているだけの場合があり、血流が増えることで再出血しやすくなります。
そのため、抜歯前だけでなく抜歯後も、激しい運動や長時間の入浴、飲酒などの血行が良くなる行為を避け、歯科医の指示に従って安静に過ごすことが求められます。
仕事などで体を動かす必要がある場合は、こまめに休憩を取りながら無理のない範囲で行動し、できるだけ患部に負担をかけないようにしましょう。

まとめ
マウスピース矯正で親知らずを抜くべきかどうかは、親知らずの生え方、あごのスペース、虫歯や歯周病の有無などを総合的に判断する必要があります。
まっすぐ生えていて問題がない場合は抜歯の必要がないこともありますが、歯の移動を妨げたり、将来的なトラブルが予想される場合には、抜歯が推奨されるケースもあります。
マウスピース矯正で親知らずを抜く場合、抜歯後の状態も含めて治療計画を立てる必要があります。
不安や疑問がある方は、治療を始める前に矯正歯科医にしっかりと相談しましょう。
エミニナル矯正では、実績のある矯正歯科医が在籍しており、初回診断(歯型分析)時に親知らずの抜歯についても丁寧にご説明しています。
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