マンジャロは、GLP-1受容体作動薬にGIP受容体作動薬の作用を加えた薬剤であり、2型糖尿病や肥満症の治療に用いられ、優れた血糖降下作用や体重減少効果が期待されています。しかし、治療が順調に進み、目標達成や状態の改善が見られた際に、薬剤の中止を検討するケースもあるでしょう。マンジャロの投与をやめた場合、体にはどのような変化が起こるのでしょうか。特に多くの人が懸念するのは、せっかく減少した体重のリバウンドです。
本記事では、マンジャロを中止した後に起こりうる身体の変化、リバウンドのリスクとメカニズム、そして適切な中止方法や、中止後の体重を維持するための具体的な対策について詳しく解説します。マンジャロの中断を検討されている方、またはすでに中止された方にとって、今後の健康管理の一助となる情報を提供することを目指します。自己判断による中止はリスクを伴うため、必ず医師の指導のもと、計画的に進めることの重要性をお伝えします。
マンジャロ中止で起こりうる身体の変化
マンジャロは、体内で血糖値や食欲のコントロールに関わるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)というホルモンの働きを補強することで効果を発揮します。これらのホルモンは、食事を摂ると消化管から分泌され、膵臓からのインスリン分泌を促進したり、グルカゴンの分泌を抑制したり、胃の内容物が排出される速度を遅くしたり、脳に作用して食欲を抑えたり満腹感を高めたりする働きがあります。
マンジャロの投与を中止すると、これらの薬剤によって補強されていたGLP-1やGIPの作用が弱まります。その結果、マンジャロによって得られていた様々な効果が徐々に失われていくことになります。これは、体がマンジャロが投与されている状態に慣れていたものが、元の状態、あるいは治療を開始する前の状態に戻ろうとする自然な変化です。この変化は、体重、食欲、血糖コントロールなど、多岐にわたる体調に影響を及ぼす可能性があります。
体重増加(リバウンド)の可能性
マンジャロを使用している期間中に体重が減少した場合、中止後にリバウンド(体重増加)する可能性は十分にあります。これはマンジャロの体重減少効果が、主に以下のメカニズムによってもたらされているためです。
- 食欲抑制と満腹感の向上: マンジャロは脳の満腹中枢に作用し、食欲を抑え、少量で満腹感を得やすくします。
- 胃内容排出の遅延: 胃から腸への食べ物の移動を遅くすることで、満腹感が持続しやすくなります。
これらの効果により、自然と食事量が減り、摂取カロリーが抑えられることで体重が減少します。マンジャロを中止すると、これらの作用がなくなります。そのため、食欲が元に戻ったり、以前よりも強く空腹を感じやすくなったり、満腹感を得にくくなったりする可能性があります。その結果、食事量が増え、摂取カロリーが消費カロリーを上回るようになると、体重が増加に転じることになります。
研究データでも、GLP-1受容体作動薬(マンジャロとは作用機序が一部異なりますが、体重減少効果が期待できる点で共通します)による体重減少効果は、薬剤の中止後に失われることが報告されています[1]。例えば、ある研究では、GLP-1受容体作動薬と生活習慣改善で体重を減らした人々が、薬剤を中止して生活習慣改善のみに戻すと、平均して減少した体重の約3分の2が1年以内に戻ってしまったという結果が出ています[3, 4, 6-19]。マンジャロも同様に、薬剤の効果によって得られた体重減少は、薬剤中止後に維持することが難しい場合が多いと考えられます。リバウンドの程度や速さは個人差がありますが、マンジャロ中止後の体重管理は、意識的な対策が非常に重要になります。
食欲や満腹感への影響
マンジャロの投与中は、「あまりお腹が空かなくなった」「少し食べただけですぐにお腹がいっぱいになる」「以前のように間食をしたいと思わなくなった」といった食欲の変化を感じていた方も多いでしょう。これは前述のように、マンジャロが食欲を司る脳の領域に作用し、満腹感を高め、食欲を抑制する効果があるためです。
マンジャロを中止すると、これらの食欲抑制効果や満腹感増強効果が徐々に薄れていきます。多くの人が、マンジャロ使用前と同じか、場合によってはそれ以上に食欲を感じやすくなったり、少量では満足できなくなったりする可能性を報告しています。特に、マンジャロによって抑えられていた「食べたい」という本能的な欲求が解放されることで、以前よりも強い食欲を感じることがあります。また、胃内容排出の遅延効果もなくなるため、食後すぐにまた空腹を感じやすくなることも考えられます。
この食欲の変化は、リバウンドの大きな要因となります。マンジャロに頼らずに食欲を適切に管理するためには、中止前から、あるいは中止と同時に、食事内容や食事行動(ゆっくり食べる、間食を控える、など)に対する意識的な取り組みが必要不可欠です。マンジャロによる効果が失われることを理解し、それに代わる、またはそれを補うための具体的な食事管理計画を立てることが重要です。
血糖コントロールへの変化
マンジャロは、2型糖尿病の治療薬としても承認されており、強力な血糖降下作用を持っています。これは、血糖値に応じてインスリン分泌を促進したり、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑えたりする作用によるものです。糖尿病患者さんがマンジャロを使用している場合、マンジャロの中止は血糖コントロールに直接的な影響を及ぼします。
マンジャロの投与を中止すると、これらの血糖降下作用が失われます。特に、マンジャロによって良好な血糖コントロールが維持できていた場合、中止後に血糖値が再び上昇し、高血糖状態になるリスクが高まります。これは、糖尿病の合併症(神経障害、網膜症、腎症など)のリスクを高めるだけでなく、倦怠感、喉の渇き、頻尿などの自覚症状を引き起こす可能性もあります。
糖尿病患者さんにとって、マンジャロの中止は治療計画の変更を意味します。自己判断で中止すると、血糖コントロールが著しく悪化し、危険な状態に陥る可能性もゼロではありません。中止の際は、必ず医師と十分に相談し、中止後の血糖変動を予測し、必要に応じて他の糖尿病治療薬への切り替えや、生活習慣療法のさらなる強化など、代替の治療方針を決定する必要があります。定期的な血糖モニタリングも、中止後の血糖状態を把握するために非常に重要になります。非糖尿病患者さんが肥満治療としてマンジャロを使用していた場合でも、中止後に食事量の増加などによって血糖値が上昇しやすくなる可能性は考慮しておくべきでしょう。
その他の体調の変化
マンジャロの使用中に経験していた副作用(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛など)は、マンジャロを中止することで軽減または消失する可能性が高いです。これらの消化器系の副作用は、マンジャロの作用、特に胃内容排出遅延作用や消化管の運動への影響によるものが大きいためです。副作用に悩まされていた方にとっては、中止が良い変化と感じられるかもしれません。
一方で、マンジャロがもたらしていたその他の健康上のメリット(例えば、血圧や脂質プロファイルの改善など、糖尿病や肥満に伴うリスク因子への好影響)が、中止後に元に戻る可能性も考えられます。体重が増加すれば、それらのリスク因子が悪化することも十分にあり得ます。
また、マンジャロの使用によって、特定のホルモンバランスや体の機能に何らかの変化が生じていた場合、中止後にそれらのバランスが再調整される過程で一時的な体調の変化を感じる可能性も理論的には考えられます。ただし、具体的な研究報告は限られているため、個人差が大きい部分と言えます。
中止後の体調変化については、リバウンドや血糖変動に加えて、全身倦怠感、消化器症状の再発・消失、あるいは予期しない体調不良などが起こりうることを念頭に置き、自身の体の変化に注意深く耳を傾けることが重要です。何か気になる症状が現れた場合は、速やかに医師に相談するようにしましょう。
マンジャロの適切なやめ方とは
マンジャロの投与を中止することは、単に注射をやめるという行為にとどまらず、体重管理や血糖コントロールといった、治療の根幹に関わる重要な決断です。そのため、適切なプロセスを踏むことが、中止後の健康状態を良好に保つために不可欠です。最も強調すべき点は、自己判断による中止は避けるということです。
自己判断せず必ず医師に相談する
マンジャロの中止を検討する際には、必ず主治医に相談し、その判断を仰ぐ必要があります。自己判断でマンジャロの投与を中止することは、以下のような様々なリスクを伴う可能性があります。
- 急激なリバウンド: 医師の指導なく漫然と中止すると、食欲のコントロールが難しくなり、計画的な対策を講じる前に体重が急激に増加してしまうリスクがあります。
- 血糖コントロールの悪化: 糖尿病患者さんの場合、自己判断での中止は血糖値の急激な上昇を招き、危険な状態に陥る可能性があります。他の薬剤への切り替えや用量調整が必要なケースが多いです。
- 隠れた基礎疾患への影響: マンジャロは体重減少だけでなく、血圧や脂質などにも良い影響を与えている場合があります。中止によってこれらの数値が悪化し、心血管疾患などのリスクが高まる可能性もゼロではありません。
- 中止後の体調不良への対応: 中止後に予想外の体調変化や症状が現れた場合に、自己判断では適切に対処できない可能性があります。
医師は、患者さんの現在の体重、血糖値、HbA1c、基礎疾患の状態、マンジャロの使用目的(糖尿病治療か肥満治療か)、マンジャロによる効果の程度、他の治療薬の使用状況などを総合的に評価し、マンジャロを継続する必要があるのか、中止しても安全なのか、中止する場合はいつ、どのように行うのが適切なのかを判断します。また、中止後のリバウンドや血糖変動に対する具体的な対策についても、患者さん一人ひとりの状況に合わせてアドバイスを提供してくれます。マンジャロの中止は、必ず医師と共同で行うべき計画的なプロセスであると認識しましょう。
投与期間は症状や目標により異なる
マンジャロの投与期間は、治療の目的や個々の患者さんの状態、治療目標によって大きく異なります。
- 2型糖尿病の治療: 血糖コントロールが目標値に達し、その状態を他の治療法(食事療法、運動療法、他の種類の経口糖尿病薬など)で維持できると医師が判断した場合に、マンジャロの中止が検討されることがあります。ただし、マンジャロがHbA1cの低下だけでなく、体重減少や心血管イベントのリスク低減にも寄与している場合、継続が推奨されるケースも多いです。医師は、糖尿病の状態、合併症のリスク、患者さんのライフスタイルなどを総合的に考慮して判断します。
- 肥満症の治療: 体重減少が目標値に達したこと、あるいは一定期間使用しても十分な効果が得られない場合に、中止が検討されます。ただし、減量した体重を維持することも重要な目標であり、マンジャロがその維持に役立つ場合、継続または減量した用量での維持療法が選択肢となることもあります。また、肥満に関連する健康問題(高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など)がどの程度改善したかも、中止を判断する上で考慮される要因となります。
投与期間に明確な一律の基準があるわけではなく、あくまで個々の患者さんの臨床的な状態や治療への反応に基づいて、医師が判断を行います。「いつまで飲み続ければよいのか」という疑問がある場合は、定期的な診察時に遠慮なく医師に質問し、ご自身の治療計画や目標について確認することが大切です。治療のゴールは、単に薬剤を使用することではなく、健康状態の改善と維持であることを理解しておきましょう。
段階的に減量していくケース
マンジャロを中止する際、特に高用量を使用していた場合や、副作用が比較的強く出ていた場合など、医師の判断で段階的に投与量を減らしてから完全に中止するという方法がとられることがあります。これは、体を急激な変化から守り、中止に伴う影響(例:食欲の急激な増進や体調の変化)を最小限に抑えることを目的としています。
例えば、週1回の注射であるマンジャロの場合、通常使用していた用量から一段階低い用量に変更し、数週間様子を見てから完全に中止する、といった方法が考えられます。投与量を段階的に減らすことで、体内の薬剤濃度が緩やかに低下し、体が新しい状態に順応する時間を稼ぐことができます。これにより、急な食欲の増加や血糖値の変動が起こりにくくなる可能性があります。また、マンジャロの副作用が用量依存的である場合、減量することで副作用が軽減され、中止に向けた移行期間をより快適に過ごせるというメリットもあります。
ただし、この段階的な減量が必要かどうか、どのように行うかについては、患者さんの病状、使用しているマンジャロの用量、全身状態などを医師が個別に判断します。自己判断で勝手に用量を減らすことは避け、必ず医師の指示に従ってください。医師との十分なコミュニケーションを通じて、ご自身にとって最も安全で適切な中止方法を確認することが重要です。段階的減量が選択されないケースもあり、それは患者さんの状態によっては急な中止でも問題がない、あるいは段階的な減量が特にメリットをもたらさないと医師が判断した場合です。いずれにしても、医師の指示が絶対です。
マンジャロ中止後のリバウンド対策
マンジャロ中止後のリバウンドを防ぎ、せっかく減少した体重を維持するためには、マンジャロの薬剤効果に頼らない、自律的な体重管理のスキルと習慣を身につけることが不可欠です。これは、マンジャロを使用している期間中に並行して取り組むことが理想ですが、中止後からでも遅くはありません。リバウンドを防ぐための対策は多岐にわたりますが、特に重要なのは「食事内容の見直しと管理」「継続可能な運動習慣」「体重や体調の記録」の3つです。
食事内容の見直しと管理
マンジャロによる食欲抑制効果がなくなった後も体重を維持するためには、食事による摂取カロリーを適切に管理する必要があります。これは単に食事量を減らすということだけでなく、何を食べるか、どのように食べるかを見直すことが含まれます。
リバウンドを防ぐための食事のポイント:
- バランスの取れた食事: 炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素をバランス良く摂取することを心がけましょう。特に、筋肉量の維持に役立つタンパク質は重要です。肉、魚、卵、大豆製品などを毎食に取り入れましょう。
- 食物繊維を豊富に: 野菜、きのこ、海藻、全粒穀物、豆類などに含まれる食物繊維は、満腹感を持続させ、血糖値の急激な上昇を抑えるのに役立ちます。積極的にこれらの食材を摂取しましょう。
- 加工食品や高カロリー飲料を控える: スナック菓子、清涼飲料水、ファストフードなどの加工食品は、カロリーが高いにも関わらず栄養価が低い傾向があります。これらを控え、自然な食品を中心に選びましょう。
- 食事のタイミングと速度: 毎日決まった時間に食事を摂ることで、体のリズムが整いやすくなります。また、よく噛んでゆっくり食べることで、満腹中枢が刺激され、少量でも満足感を得やすくなります。早食いは避けましょう。
- 水分を十分に: 水やお茶をこまめに飲むことで、空腹感を紛らわせたり、代謝をサポートしたりする効果が期待できます。
- 間食のコントロール: どうしても間食をしたい場合は、ナッツ、ヨーグルト、果物など、栄養価が高く少量で満足できるものを選びましょう。無計画な間食は避け、必要に応じてのみ摂るようにします。
食事の例 | リバウンドを防ぐ食事 | リバウンドしやすい食事 |
---|---|---|
朝食 | 全粒パン、卵料理、ヨーグルト、果物 | 菓子パン、シリアル(砂糖が多いもの)、ジュースのみ |
昼食 | 鶏むね肉のサラダ、玄米おにぎり、具沢山の味噌汁 | カップラーメン、コンビニ弁当(揚げ物が多いもの)、菓子パンと清涼飲料水 |
夕食 | 魚料理または豆腐料理、野菜たっぷりのおかず、ご飯(少量) | 揚げ物中心、麺類単品、甘いデザート、アルコールの過剰摂取 |
間食 | ナッツ(適量)、無糖ヨーグルト、果物、プロテインバー(低糖質) | スナック菓子、ケーキ、チョコレート、砂糖入り清涼飲料水 |
飲み物 | 水、無糖のお茶、ブラックコーヒー | ジュース、砂糖入りコーヒー、清涼飲料水、アルコール(過剰な量) |
食事の方法 | よく噛んでゆっくり食べる、腹八分目を意識する、欠食しない | 早食い、満腹になるまで食べる、朝食を抜く、夜遅くに大量に食べる |
食品の選び方 | 食物繊維が多いもの、タンパク質が多いもの、旬の野菜や果物 | 加工度が高いもの、脂っこいもの、甘いもの |
マンジャロによって得られた食習慣の変化(例えば、少量で満足できるようになった、健康的な食品を選ぶようになったなど)を、中止後も意識的に継続することが成功の鍵となります。難しい場合は、栄養士に相談することも検討しましょう。
継続可能な運動習慣を取り入れる
体重維持には、食事管理と並んで運動が非常に重要です。運動は消費カロリーを増やすだけでなく、筋肉量を維持・増加させ、基礎代謝を高く保つことにもつながります。また、運動はストレス解消にも役立ち、過食を防ぐ効果も期待できます。
リバウンドを防ぐための運動のポイント:
- 有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせ: 脂肪燃焼にはウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動が効果的です。週に150分以上の中程度の有酸素運動を目指しましょう(例:早歩き30分を週5回)。基礎代謝を高めるためには、スクワット、腕立て伏せ、腹筋などの筋力トレーニングも重要です。週に2~3回、全身の筋肉をバランス良く鍛えることを目指しましょう。
- 継続可能な習慣を見つける: 運動は「頑張る」だけでなく「続ける」ことが大切です。自分が楽しいと思える運動、生活の中に無理なく組み込める運動を見つけましょう。通勤時に一駅分歩く、エレベーターを使わず階段を使う、休憩時間にストレッチをするなど、日常生活の中で活動量を増やす工夫も有効です。
- 目標設定: いきなり高い目標を立てるのではなく、達成可能な小さな目標から始めましょう。「まずは毎日15分歩く」「週に1回は筋トレをする」など、具体的に目標を設定すると継続しやすくなります。
- 誰かと一緒に: 友人や家族と一緒に運動したり、運動サークルに参加したりすることで、モチベーションを維持しやすくなることがあります。
- 専門家のアドバイス: どんな運動をしたら良いか分からない場合は、医師や運動指導士に相談し、ご自身の体力や健康状態に合った運動プランを作成してもらうのも良いでしょう。
マンジャロ使用中に運動を始めた方も、中止後もその習慣を維持することが重要です。マンジャロの効果がなくなったとしても、運動による健康上のメリットは変わりません。
体重や体調の変化を記録する
体重や体調の変化を日々記録することは、リバウンドの兆候を早期に捉え、対策を講じるために非常に有効です。
記録することのメリット:
- 変化の早期発見: 毎日同じ時間に体重を測り、記録することで、わずかな体重増加にもすぐに気づくことができます。「少し増えてきたな」と感じたら、食事や運動を見直すなど、早期に対策を講じることが可能です。
- 客観的な把握: 食事内容、運動量、その日の体調(空腹感、満腹感、気分など)を記録することで、体重の変動とそれらの要因との関係性を客観的に把握することができます。「この食事をした日は体重が増えた」「運動した日は体調が良い」など、自分自身のパターンを知ることができます。
- モチベーションの維持: 体重が維持できている、あるいはさらに減っている場合は、それがモチベーションになります。もし増えてしまっても、記録を見ることで原因を振り返り、次につながる学びとすることができます。
- 医師との共有: 記録を医師に見せることで、医師は患者さんの状態をより正確に把握し、適切なアドバイスを提供しやすくなります。
記録方法は、ノートやカレンダーに手書きする、スマートフォンアプリを活用するなど、自分が続けやすい方法を選びましょう。体重だけでなく、簡単な食事内容(朝・昼・晩の主なもの、間食)、運動内容(種類、時間)、その日の体調などを記録すると、より詳細な分析が可能になります。
マンジャロをやめる前に知っておくべきこと
マンジャロの中止は、治療の終了ではなく、治療法の変更や維持期への移行と捉えるべき重要なステップです。やめることを検討する前に、いくつかの重要な点について理解しておく必要があります。
治療の再開や代替薬について
マンジャロを中止した後に、もしリバウンドが著しい場合や、血糖コントロールが悪化した場合など、再び薬剤による治療が必要となる状況も考えられます。その場合、マンジャロの投与を再開することが可能なのか、あるいは他の薬剤を検討するのかは、患者さんの現在の状態や医師の判断によります。
- マンジャロの再開: 中止期間が短く、特に問題なく中止できた場合は、マンジャロの投与を再開することが選択肢となることがあります。ただし、再開にあたっては、中止前と同じ用量から始めるのか、低い用量から再開するのかなど、医師の指示が必要です。
- 代替薬の検討: マンジャロ以外のGLP-1受容体作動薬(例: セマグルチドなど)、あるいは他の種類の糖尿病治療薬(例: SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬など)、または他の種類の肥満治療薬(日本で承認されているもの)など、患者さんの状態や目標に応じて様々な代替薬が候補となり得ます。
重要なのは、自己判断で再び薬剤を使い始めたり、手元にある以前の薬を自己判断で服用したりしないことです。必ず医師と相談し、現在の健康状態に最も適した治療法を選択する必要があります。医師は、過去の治療歴、現在の病状、薬剤への反応性などを考慮して、最適な薬剤や治療方針を提案してくれます。リバウンドや病状の悪化に一人で悩まず、早めに医師に相談することが大切です。
中断後の体調不良時の対応
マンジャロを中止した後に、予期しない体調不良が現れる可能性もゼロではありません。前述したように、副作用が消失する方が多いですが、中にはマンジャロによって抑えられていた別の症状が現れたり、体の変化に体が順応する過程で一時的な不調を感じたりすることもあるかもしれません。
特に注意すべきは、糖尿病患者さんの場合、血糖値の変動に伴う症状です。血糖値が急激に上昇すると、強い喉の渇き、多尿、全身倦怠感、体重減少などが現れることがあります。これらの症状は糖尿病性ケトアシドーシスなどの重篤な合併症につながる可能性もあるため、決して軽視してはいけません。また、非糖尿病患者さんでも、マンジャロ中止後に過食傾向になり、胃もたれや消化不良などの消化器症状が出やすくなる可能性も考えられます。
マンジャロ中止後にいつもと違う体調を感じたり、気になる症状が現れたりした場合は、すぐに医療機関を受診し、医師に相談してください。自己判断で市販薬を服用したり、様子を見すぎたりすることは、病状の悪化を招く可能性があります。中止した薬剤名(マンジャロ)といつ頃中止したかを医師に伝え、現在の症状について詳しく説明することが、迅速かつ適切な診断と治療につながります。中止後の体調管理は、医師との連携が非常に重要であることを忘れないでください。
まとめ:マンジャロ中止は医師の指示に従い計画的に
マンジャロは、2型糖尿病や肥満症の治療において、血糖コントロールの改善や体重減少に優れた効果を発揮する薬剤です。しかし、その効果は薬剤の作用によるものであり、投与を中止すると、食欲が増加したり満腹感が得にくくなったりするなど、マンジャロによって得られていた効果が徐々に失われていきます。その結果、体重がリバウンドするリスクは非常に高いと言えます。また、糖尿病患者さんの場合は、血糖コントロールが悪化する可能性も十分に考えられます。
マンジャロの中止を検討する、あるいはすでに中止している方は、以下の重要な点を必ず押さえておきましょう。
- 自己判断での中止は絶対に避ける: マンジャロの中止は、リバウンドや血糖コントロールの悪化など、様々なリスクを伴います。必ず主治医に相談し、ご自身の病状や治療目標に基づいた適切な中止時期や方法についてアドバイスを受けてください。
- 中止は治療計画の一部: マンジャロの投与期間は、個々の患者さんの状態や目標によって異なります。医師は治療全体の計画の中で、マンジャロの役割を位置づけています。中止は、その計画を変更する重要なステップです。
- リバウンド対策は必須: マンジャロ中止後のリバウンドを防ぐためには、薬剤に頼らない自律的な体重管理が不可欠です。バランスの取れた食事、継続可能な運動習慣、そして体重や体調の記録といった生活習慣の見直しと定着が最も重要な対策となります。
- 中止後のフォローアップ: 中止後も定期的に医師の診察を受け、体重や血糖値などの状態を確認してもらうことが大切です。もしリバウンドが著しい場合や、体調に異変を感じた場合は、すぐに医師に相談し、必要に応じて治療の再開や代替薬の検討など、新たな対応を検討しましょう。
マンジャロによる治療で得られた成果を維持するためには、中止後も気を抜かず、医師と連携しながら計画的に健康管理に取り組む姿勢が重要です。本記事が、マンジャロの中止を検討されている方や、中止後の体重管理に悩んでいる方々にとって、適切な行動をとるための手助けとなれば幸いです。
免責事項:
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の患者さんの病状や治療法に関するアドバイスではありません。マンジャロの中止や治療方針の変更については、必ず主治医にご相談ください。本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた損害等について、当方は一切責任を負いかねます。
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