更年期とがん検診に向き合う_沢岻美奈子女性医療クリニックを編集部が取材!
乳がん検診や更年期治療など、40代以降の女性を中心に幅広い医療を提供する沢岻美奈子女性医療クリニック。今回は、院長の沢岻美奈子先生をユアケア編集部が取材しました。
沢岻美奈子女性医療クリニックを設立した経緯や業界の課題、先生のインスタグラムについてもインタビューしたのでぜひご覧ください。
沢岻美奈子 先生のプロフィール
【プロフィール】
女性医学学会専門医。琉球大学を卒業し1998年に医師へ。沖縄県内のクリニックで勤務後、「ヘルスリテラシーを高め自分らしく健康に美しく」を目指し、2013年から沢岻美奈子女性医療クリニックの院長となる。
がん検診の受診率アップが元々のスタート
___沢岻美奈子女性医療クリニックを設立した経緯を教えてください。
がん検診受診率をなるべく高めるために、女性特有の検診をワンストップでできる婦人科クリニックを前身となる医療法人が開設されました。雇われ院長を経て設立から7年目に独立。沢岻美奈子女性医療クリニックを引き継ぐことになりました。
がん検診を続けながら、更年期を中心としたさまざまな女性医療を提供しています。
がんは早期発見だけでなく予防も大切
___クリニックとして最も大切にしていることを教えてください。
病気の早期発見だけでなく、予防の大切さもしっかり伝えることです。そもそも、沢岻美奈子女性医療クリニックは、がん検診の受診率を上げるために設立されているので、本格的な治療はもちろんのこと、病気の早期発見と予防に関しても重視しています。
乳がんや子宮頸がんといったマザーキラーと呼ばれているがんは、正しい知識を持っていれば予防できる病気で、早期発見により死亡率を下げられます*。そのため、年齢関係なくたとえ高校生であっても、性行為の経験があれば、2年に1回の検診の重要性を伝えています。
がん検診の受診や予防を訴えていくお話を聞きながら、沢岻美奈子女性医療クリニックは地元の方とのつながりが強いなと感じました。
開業後に直面した困難はコロナウイルスの感染拡大
___クリニックを開業してから直面した困難な課題について教えてください。
2019年にコロナウイルスの影響で受診抑制がありで受診者数が減ったタイミングです。経営的な事の不安ももちろんのこと、受けるべき医療が受けれないことが病気発見の遅れにつながるのではないかと、とても懸念していました。
実際にもっと早く見つかるべきだった乳がん患者さんもおり、心を痛めました。この経験から、早期発見のための検診や、不調を我慢しないことをしっかり伝えたくてインスタグラムでの発信をすることに決めました。
コロナ禍後も、沢岻先生のインスタグラムでは、定期的にさまざまな情報が発信され続けていますよ!
1人1人に寄り添うことが患者様の未来へつながる
___患者様と接するときに大切にしていることを教えてください。
患者様1人1人に寄り添って、今後について考えるようにしています。
がん検診に来ている方や、更年期治療、PMSに悩んでいる方や、避妊、メンタルが不安定な方など、クリニックを訪れる理由は様々です。女性にとって、ホルモンバランスの影響は切っても切り離せません。そこに、年齢を重ねると共に確率が上がるがんの話など、少しでも不安を取り除くコミュニケーションをとることを心がけています。
そのうえで、ピル処方やがん治療などを行うことにより患者さんの納得感も上がりますよね。
沢岻先生のインスタグラムについて
__SNSで発信をする際に特に意識してることや気を付けてることがあれば教えてください。
インスタグラムでは、専門家目線で診療の生の声や率直な感想を伝えることを心がけています。
そもそもインスタグラムを始めたのは、病気の早期発見の大切さや定期検診の必要性を伝えるためでした。投稿すると残り続けます。診療時に聞いた説明を忘れていたとしても、いつでも見返せる強みがあるので、参考書のような存在でありたいと考えています。
投稿を見返して、忘れてしまった説明を思い出したり、ふとした疑問を解決できたりしたら嬉しく思います。
本音で相談できる場としてもインスタグラムを活用できます!あまりほかの人に相談できないような悩みでも、直接先生にメッセージを送ってみましょう。
ピル=避妊の認識はもう遅い!
___ピルの分野で最も課題と感じていることを教えてください。
ピル=避妊というイメージが根強く残っていることですね。
今の若い方は、親御さんの世代より圧倒的に生理の回数が増えています。それに伴い重い症状やPMSなどに悩んでいる人も増えています。これら女性特有の悩みを解決するための薬として低用量ピルがあるにも関わらず、誤った知識や偏見によって、服用しない方がおりとても悲しいです。
そのような患者様には、副作用のリスクがあまり高くないことと、得られるメリットの方が大きいことを伝えています。メリットとデメリットをしっかり伝えたうえで低用量ピルを提案し、患者様自身が選べるような説明を心がけています。
ほかにも、沢岻先生は更年期世代を中心にみられているので、子育て仕事で多忙で多くの責任を抱える40代こそ確実な避妊が大切ということも伝えているそうです。
婦人科の課題は社会問題を反映している
___産婦人科医療の分野で最も課題と感じていることを教えていただけますか。
不妊で悩む方が増えていることと社会全体の少子化が大きな課題だと考えています。
晩婚化が進む現代社会では、妊娠しようと思った時にはもう手遅れになっていることが多くあり、結果的に少子化にもつながっています。不妊に対する知識の少なさが原因の1つだと思っているので、教育含め社会全体で考えなければいけません。医師としては、妊娠適齢期に対する正しい知識を伝えなくてはならないと考えています。
仕事をとるか子どもをとるかの2択ではなく、どちらも選択できるような社会の実現のためにも、不妊に対する知識をつけることは一般市民にとっても有益なのではないでしょうか。
アフターピルの市販化について
___アフターピルの薬局販売についてどのように考えていますか?
個人的にはアフターピルの市販化に賛成です。
現在日本で認可されている緊急避妊薬は、72時間以内に飲まなければならず、受診にかかる時間がアフターピルにとって大きな壁となっているのは事実です。服用に間に合わなくて避妊手術をするくらいなら、すぐに手に入るような環境が整備されるほうが良いのではないでしょうか。
実際に、私が参加した講習会でアフターピルを処方している薬局の薬剤師さんの話を聞く機会がありました。首都圏のその薬局では1か月に108名へアフターピルを処方したそうで、薬剤師さんも想定より多くて驚いていました。現状、想定以上の需要があるみたいです。
望まない妊娠が最悪のケースと考えると、たとえ競合になったとしても市販化は患者を守る選択肢になります。悲しむ人を減らせる1つの方法ですね。
患者様の喜びの声について
__心に残っている患者様の喜びの声や口コミを教えてください。
更年期症状で悩んでいる方を中心に、「ゆっくり聞いてくれてよかった」「話せてよかった」と言ってくださる患者様が多くいることが支えになっています。
産婦人科ではなく婦人科なので、1人1人に寄り添う診療が大事です。寄り添うコミュニケーションが患者様に伝わっているのを実感しとても嬉しく思います。
沢岻先生は、更年期世代の方をよく診ているので、同世代の女性にしかわからないことを聞ける場として地元の方から信頼されていると感じました。
クリニックのこれからについて
____クリニックの今後の展望を教えてください。
まずは、外来の患者様を大切にすること。検診の方含めて親身になって診察していくのはもちろんのこと、インスタグラムでの発信は続けて婦人科受診をハードルを少しでも下げたいと思っています。
また、更年期の方が多く訪れるクリニックとして、更年期を上手に乗り切って元気に長生きする方が一人でも増えるような診療を心がけたいとも考えています。今後はさらに広げて、若い女性にも更年期のことを伝えていきたいです。
沢岻美奈子女性医療クリニックだからできる発信力をもとに、多くの世代へ様々な情報を発信し続けます。
最後にメッセージ
___最後に読者へメッセージをお願いします。
社会は情報に溢れています。全てが正しいわけではなく、間違った情報もたくさんあります。そんななかで、本当に正しいかを見極めるヘルスリテラシーをつけることがとても重要です。
情報を取捨選択することを忘れないでください。もし本当の情報が分からなかったら、病院に相談しにいく勇気も大切です。
また、若い頃から月経とどう付き合うかが将来を決めるということも覚えておいてほしいです。生理不順やひどい生理痛を放っておくと不妊につながってしまいます。何か変だな、と思ったらなるべく早めに検診や診察にいくようにしてくださいね。
誰にも相談できずに悩んでいる人や、少しでも体が変だと感じている人は、気軽に足を運んでみてください。
先生自身も更年期の真っ只中で、乳がん世代でもあるとおっしゃっており、利用者に近い視点で医療を提供されているのがよくわかりました。